私的な結論

概要

うっかり書いてしまった手前、一応ドリコム利用規約変更騒動に対して、自分なりに結論を出しておこうと思う。
例によって長いので興味が無い場合は読まない事をオススメ。
私は法律の専門家ではないので、解釈に誤まりもあるかもしれない。その点事前に了承だけお願いしたい。

書かなきゃいいのに

ドリコム利用規約変更は結構騒ぎになっている模様。
いや、私も酔っ払った勢いで記述はしたが、別に当事者ではないので書いている内容ほど憤っているわけではない。
で、思うのはこんな事書かなきゃ、こんな騒動にもならなかったのにね、という事。
企業でやる限りそうもいかないのだが、アマチュアなら書かずに済むのだ、これが。
それで飯食っていくのは大変だよなぁ、とそんなに他人事でもないので不憫に感じたりもする。

大衆が糾弾するワケ

はてなはてなスクリーンショットという機能がある。
これは対象のページのスクリーンショットを自分のページに貼り付ける機能で、例えばスクリーンショット内に絵などが含まれている場合、これも一種の著作権侵害にならないのかという気もする。
予想だがこの辺の解釈は非常に曖昧なもので、裁判所での結論が出ない限り「怪しいけど、うーんどうかなぁ」というレベルのものではないだろうか。
では実際にはてなスクリーンショットの機能を使用して作成した画像の全てが、著作権法違反になると判定された場合、はてな著作権法違反を推奨するような機能をあえて公開しているわけだ。法的にはともかく、心情的には責任を免れられないだろう。
でもなんでそんなに叩かれないかというと、ユーザーにとって有益か否かに尽きる。有益なグレーゾーンは看過するし、有害なグレーゾーンは声高に糾弾する。
それが大衆というものだ。
あえてそんな大衆のためにリスクを冒したはてなは大したものなのかもしれない。

WWWの著作権

一度立ち止まり、さらに話を広げると、そもそもWWWというのはリンクをたどって自由自在にWolrd WideなWebを散策出来るという概念なのだが、このリンクをたどるためには、どこかでリンクを作る必要がある。
大分前のリンクフリーやアンリンクフリーの話で出尽くした議論だが、そもそもリンクを辿るという事を前提にした仕組みを利用して文書を公開しているのに、そのリンクを制限するとかリンクの際に連絡が必要だとか、そういう制限を作者が付けるのはおかしいという話があった。
しかし当然文書は作者の著作物であり、その文書に対する一切の制約は、作者の意思次第という話もある。が、リンクをしているという文書を作る作者にはリンクをしている文書の著作権もあり、リンクをしている文書の意思次第でリンクは出来るのではないか、という議論もある。
実はこれは結論が出ている事で、下記辺りに詳説はあるが、
http://www.sal.tohoku.ac.jp/~gothit/webpolicy.html
リンクすることはリンクする側の自由である。
しかしリソースを組み込むこと(frameやimgなど)は違反としている。
つまりリンク集は合法、リンク集で別の人間が作った画像(バナー含む)を勝手に自己のページ内に組み込んで使うのは違法となる。


この解釈からRSSを考えると、RSSはグレーなんだけどシステムが使っていることを認めているなら、それは「一般的に事前承諾されていると認識出来る範囲」の引用と解釈できるだろう。たとえRSSで全文配信されていてもね。

電子文書の著作権

複数人が参加して編集するという形態をとれ、かつコピーも容易な電子文書って、要するにまだ法律的に解釈は確立しきっていないわけで。
アナログ文化でも実は結構アバウトで、例えばゴーストライターが半分くらい記述した書籍の著作権ゴーストライターがさらに自分の作業の5割を別のライターに依頼した場合の著作権。出版物を改変する際の手順。
法律というのは著作権法だけで構成されるものではないので、解釈のしようはいくらでもある。
こんなの「慣例」というものがどれほど広がっているかどうか次第であって、慣例が広まりきっていない(将来的に渡り電子で広まりまた遵守されるかは不明だが)電子の世界で混乱が生じるのは当たり前と言えば当たり前の話である。

他ではどうなってんの

以下ははてなダイアリー利用規約

  1. 本サービスの提供、利用促進及び本サービスの広告・宣伝の目的のために、当社はユーザーが著作権保有する本サービスへ送信された情報を、無償かつ非独占的に本サイトおよびインターネットを用いたクライアントソフトに掲載することができるものとし、ユーザーはこれを許諾するものとします。
  2. ユーザーが自己の保有する、本サービスへ送信された情報に関する著作権を第三者に譲渡する場合、第三者に本条の内容につき承諾させるものとし、第三者が承諾しない場合には、同著作権を譲渡できないものとします。

書いてる事は同じような内容である。
さらにはてな利用規約を実に20回弱改訂している。
私のはてな歴は薄いのだが、これって現行ユーザー知ってるのだろうか?
考え方によっては運用Blogで告知したドリコムは、良心的だったとも言える。
ただし今後はてな利用規約を改変して、それに対して私が不満を持つようなケースがある場合、「利用規約が改変されました。改変後の利用規約に同意しますか?」と強制的に表示されない限り私は読んでない、または同意していないと主張する可能性はある。
でもこれが通るのかどうなのかは、結局裁判しないとわかんないんだろうね。理屈上は上の理屈が正しいのだが、Webの慣例がどこまで評価値として加味されるかという話。
法律ってそんな絶対的なものじゃなくて一つの目安でしかないし、所詮人が管理してるものだから結構アバウトなものだ。そこんとこ履き違えない方がいい。

それでもドリコムがまずかった理由

変更前と変更後を並べて見せたのが愚かだったのかもしれない。大衆なんてそんなに気付かないんだから、そこまで誠実にやる必要はない。やらなきゃそんなに反発も来ない。どうせわかんないんだから。だってどれだけの人間が利用規約ちゃんと読んでんだよ、って話もある。
記述がわかりやすすぎたのがターゲット客層を考えた場合に失敗ということ。
ただ今回のような抜本的な改革については、「もし気付かれたら」という点を考えれば当初の反発の大きさを考慮しても告知自体は正解。


正解だが、告知するのだとしたらもっとフォローしないとダメ。
せめて運用する会社が変わりました、でまずワンクッション置いて、利用規約を変更しました、この利用規約の変更はこうこうこういう理由で、ユーザーにとって不利益でないともっと言わないとダメ。せめて今の批判は半数に減らせたはず。やってる事同じでも。
ドリコムの何ががっかりって、ドリコムは既に社会的には強い立場なんだから、ユーザーが甘えるのは当然。甘えてくるのを承知の上でそれを上手に利用出来るというから持てはやされてたんでしょ?と私が勝手に期待していた事を裏切られたのががっかりというだけ。


でも利用規約の14条はどの道スレスレかもしれない。
「会員著作物」って単語が唐突に出てくるけど、その単語に対する補足が一切ない。広告「等」に自由に利用するって書いてあるだけじゃ、著作権の侵害を許可しろと言ってると解釈されるのは仕方ない。範囲はもっと絞らないと誤解も広がるし、誤解じゃないんでしょという解釈が間違いだとも言えない。
この辺もやり方に不手際を感じてならない。実にがっかりである。

まとめ

何が言いたいのという話を最後にまとめておく。

  1. 参考資料として電子の文献に対してきちんと議論され、また結論の出ているWWWの著作権に対する見解は確認しておくべき
  2. ドリコムの14条の記述は改変が必要
  3. 「2」の改変をなんらかの理由により行わないのであれば、もっと告知を工夫するべき
  4. 改変された利用規約に、同意を強制しない限りユーザは同意した事にならない
  5. 著作権利用規約は別物なので、著作権譲渡が明記されない限り利用規約著作権を侵害することは難しい
  6. 上記二つがあっても、電子の世界で構築される文書の利用範囲における法的解釈は、ちゃんとした判例が出ないと不明
  7. はてな利用規約ドリコム利用規約の違いは「適用されると認識出来る範囲が大きい」、ならびに「会員著作物」というぽっと出の単語を用いているという点

という辺りだろうか。
ドリコム利用者は抗議しておくに越したことは無いが、例えば自分のBlogが勝手に本にまとめて出版されていたら、その時点で抗議してもちゃんと通ると思うけどね。Webのシステムって、基本的に説明責任を怠っているものばかりだから。別に不具合感じてないなら、不具合出そうだなぁと思いつつ使っていく度量も必要。
結論としては大して効力のない記述だから無視していいんじゃね?問題起こった時に改めて抗議すりゃいいんじゃね?それが嫌なら移転すりゃいいんじゃね?でもドリコムにはがっかりだよね、という感じ。


まあ過剰に反応しすぎない事だ。
私も過剰に反応してしまった事を猛省中である。