裏サンデー投稿トーナメントを見て思ったこと

長いっす。すいません。

裏サンデー投稿トーナメント

裏サンデーってサイトがある。
http://urasunday.com/
週刊少年サンデーが運営している、Webマンガ専用のWebサイトっていやなんとなくわかるかな。
今は日本で一番PVのあるWebマンガのサイトになっている。


んで、そこがやってた裏サンデー投稿トーナメントってのがあった。
この間結果が出たんだけど、200作品超の中から1作品のグランプリを決めて、そのグランプリは即裏サンデーで連載可能っていうかなり思い切った企画。
結果はこちら。
http://urasunday.com/urasunday_tournament01_rslt.html


俺は一応、投稿作品は全部読んで、それなりに投票もした。
とにかく興味があったから。


投稿トーナメントについての雑感

投稿トーナメントのルールは、3回戦制。
まず1回戦で200作品くらい脱落して、2回戦でさらに絞って、3回戦で絞りに絞った作品から1作品を選ぶというもの。


1回戦からずっと見てきた身として、一番強く思うのはえげつねぇな、というもの。
200作品ってひとくくりにするのも出来るけど、実際に投稿しているのは生身の人間で、それなりに思うところがあって投稿している人が落ちるわけだ。


いや、思うところなんて生易しいものじゃない。
漫画家っていうのは本当に自分との戦いなので、もうひたすら描いて描いて描きまくるしかないと思うんだよね。


たとえば小学校くらいまでなんとなく絵がうまかったやつが、中学生になって本気で漫画家になりたいと思い出して毎日絵を描いて友人に見せてうまいと言われたりして、高校くらいになってマジで勉強しだして、独学でやってみてはじめて持ち込みなり一般公開なりして。
そこでの反応はいまいちだったけどコミケとかにも出したりして、そこではそれなりの反応をもらえつつ自信と疑問とを抱きながらメジャーデビューを夢見て描き続けて、それでも持ち込みや一般公開ではいまいち人気が出ず悶々としていた状況の中、たとえば25歳くらいになって今回のトーナメントに練りに練った作品を応募しましたと。


そんな作品群が200個、容赦なく落ちる。
さらに2回戦で絞られて、3回戦でも絞られて、235個の作品の内234個が落ちてたった一個が勝ち残る。


しかも読者の投票数とか丸わかりなシステムで、投票期間が1週間くらいあるので、これならいけるだろと思ってた作品がドーンと最下位の方に沈んでいるのを、毎日ひたすら淡い期待と絶望と共に眺めることもありえるわけで。
本当にえげつない。


トーナメントってのはそういうもんだけど、サッカーワールドカップとかのスポーツ以外ではじめて目の当たりにして、本当の意味でのトーナメントのえげつなさを知った気がする。
傍観者としてはすごく新鮮で、面白かった。


漫画業界の裾野的な話

投稿トーナメントで235作品を見て、漫画という世界の裾野の広さをはじめて具体的に知った。
この235作品だって所詮一企画に対する応募でしかないわけで、ジャンプやマガジンがやってる賞とかもものっそい量あるわけだ。
これと似たようなことが、一般人にはわからないところで常時行われている。


しかも今回の応募作見ると、みんなレベルが高い高い。
もっと一般的なWeb漫画、なんというかペイントで描いた的な作品とかも多く見られるかと思ったんだけど、全然そんなことなく普通に漫画漫画してる作品達が多い。


このレベルの人をベトナムで探してもまず見つからないよ。ベトナムだと救済のTRICKERやマビロリウムのレベルで作画出来る人探しても、8000万人隅々まで探しても両手で数え切れるんじゃないかな。
日本にはこんなにいるのか、とびびった。


こんなにいるのか、というのは、こんなに漫画家で勝負賭けて、しかも日の目をまだ見ていない人達がこんなにいるのかという意味でもびびった。
今回見れたのは本当に一部で、少年ジャンプとかでもそりゃすごい量いるんだろうと。
これにさらにメジャー誌でデビュー済みの人達がいて、その中のさらに一部分ヒット作家になってると。


いやぁ、漫画業界は広すぎておののくレベルっすわ。


漫画家と他の創作活動と出版社について

俺がなんで漫画家やらその漫画のコンテストやらに興味津々かというと、漫画好きってのもあるけど、もう一つ今俺が30過ぎてから挑戦している自分自身で作る作品について、ってのが少し絡む。


まず、漫画家になりたい人ってひたすら漫画描くよね。
もちろんフリーターでやってる人もいれば、社会人しながらやってる人もいて千差万別だけど、漫画を上手くなるにはひたすら漫画描くしかない。


たとえばプログラムを勉強するのにC言語学習しましたとか、デザイン勉強するのにイラストレータやってました、とか、そういう具体的なことじゃなくて、とにかく漫画がうまくなるために漫画を描く。
もちろんいろんな方法論はあるだろうけど、最終的な目標値は漫画をうまくするってことではっきりしていて、現在の力量は実際に描くことで比較的見やすい形に出来る。


形にしたら後は実際にどこかの賞に応募したり、出版社に持ち込んだり、Webで公開して評価を受ける。
評価がよければデビューできちゃうかもしれないし、悪ければまた漫画描いて上手くなってくしかない。
この評価をよく出来るかどうかってのは完全に個人の力量に依存してるので、本当にただただ描くしかない。C++勉強したり、どっかの会社で実務経験5年経験しましたとかで仕事がもらえる世界ではないから。


さて、ところで俺は別に漫画を描かないけど、自分自身の頭の中を形にするっていう漫画に近い創作活動を始めたんだけど、わざわざ30歳まで待ってから始めた。
力量にも自信がなかったし、経済的にもどうしていいか目処が立ってなかったし、一度仕事を始めてしまうと仕事へのコミットメントが強すぎて趣味の時間でも出来なかったし、まあ覚悟が決まってなかったしね。


でも俺みたいなやつは漫画家でもいっぱいいるだろうし、それでも漫画家が早い内から漫画描きまくって賞に応募したり出来るのはなんでかなとちょっと考えたんだけど。
ひとえに出版社のおかげなのだと、ようやく投稿トーナメントを見て理解できた。


俺みたいな創作活動には出版社に該当するものがないか、あっても道筋がはっきりしていないけど、漫画はいくつかのメジャーな出版社があるし、ジャンプ編集部に認められたらジャンプで連載っていうわかりやすい道筋がある。
漫画の裾野がこれだけ広がったことに対して、出版社が果たした役割ってのはものすごく大きい。


仮にゲームだとして、ゲームのプログラムなり企画なりは企業に就職して作るもんではなく、最初からどこかに持ち込むってのが当たり前になっていたら、ゲームの創作活動も普通にそういう道筋に沿って動くと思う。
以前Aコンとか、コンテストパークとか、いわゆるRPGツクール系を中心にそういう賞もあったけど、その辺の賞は所詮賞単発であって、連載や単行本化という飯の種がはっきり示される漫画の出版社とはだいぶレベルが違う。


ゲームとかも漫画に負けないくらい個人の才能に依存する割に、出版社的な存在がなく道があやふやなので、漫画業界を参考にもうちょっと個人の才能を吸い上げる仕組みをなんとか出来ないのかなぁと思った。


だって今俺が毎日個人的にやってる内容なんて、まんま漫画家と同じようなことしてると思うぞ。
ひたすらネームもとい企画考えて、絵描いてもといプログラム書いて、いまいちだと思ったら壊して、そこそこだと思ったら公開して、公開しても反応なんてさしてないからまた別のこと考えてまたやってってのを繰り返す。
こんなん俺に限らずみんなそうだと思うんだよね。


仮に漫画だけでなく、創作活動全般に対応出来る出版社的な機構があったら、俺みたいに引きこもってひたすら自分の力量に挑戦する人もそんなにレアじゃなくなるんじゃないかな。
逆に、これがないと起業家的なビジネスセンスのある人は若い内から出来ても、クリエイティブな方向に傾倒している人はなかなか挑戦出来ないんじゃないか。RPGツクールでゲーム作って一般公開しました、だと家族の理解も得にくいだろうけど、RPGツクールでゲーム作って出版社に持ち込みました、だと全然印象違うんじゃないか。


創作活動における"出版社"

長くなってきたので、ちょっとだけだけど考えてみる。創作活動における出版社。
まず、何をするのかという話があるんだけど、とりあえず話をシンプルにするためゲームに絞ろう。


んで、このゲームの評価軸は、どれだけ稼げるか、ではなく、どれだけたくさんのユーザに遊んでもらえるか、にしよう。
漫画でいえばどれだけ単行本が売れるかって形だ。


またゲームっていう存在は、企画→ゲームそのもの、の2段階で考える。
シナリオを考えると脚本とかもあっていいけど、シナリオないゲームもあんだろってことでわかりやすくしよう。


ゲーム作るのってすごい大変なんだよ。ツクール使うこともそりゃ出来るけど、一人で作るのは限界がある。
もうちょっとネームもとい企画段階で評価してあげていいと思う。


で、この手の話をする前に、先駆者としてソフコンって存在をあげなきゃいけない。
でもソフコンを説明すると長くなりすぎるので割愛してざっくり。
ソフコンの問題は、ゲーム本体を作る必要があったこと、連載や単行本という仕組みはなくコンテスト単発で終わってしまうことで、結局ソフコンで賞受賞しましたでもそれで終わりましたになってしまう。


だから、企画段階での評価やプログラム単体での評価という辺りと、連載と単行本化についてを考えないといけない。
漫画はともかく、ゲームで考えるとこれがなかなか難しい。特に連載。
連載が出来るようになれば、ゲーム一本作るのに1年かかりますがその間無収入です、というクリエイター殺しの環境を脱して、ちょっとずつ食っていくことも出来るだろう。


実際ゲームの連載って現実的じゃないのかっていうと、たとえばElonaだってらんだむダンジョンだってちょっとずつアップデートしてったわけで、難しいか簡単かでいえば難しいが可能か不可能かでいえば可能であると、先駆者がすでに示しているでしょ。
まあバグ混入させるとひどいことになるんだけど。


もう一つ、単行本化について。
この単行本っていうのは、漫画家にとっては一つの夢。場合によっては億万長者になることも出来るし、自分の作品が形として残るからね。
ゲームの場合、単行本化というよりパッケージ化というのが適切かなと思っていて、連載で優れた人気を得た作品については、プロの手でPSやWiiXboxに移植して販売します、販売本数に対する印税を支払いますって形がベストな気がするけど、どうだろうね。




いくつか課題はあるけど、こういう道筋を用意してあげる出版社的な存在があってもいいんじゃないのという話。ゲームに限った話ではなくてね。
もっとも、ある程度力がないと駄目だけどな。ソフコンもコンテストパークも力がなかったから死んだ。
今その力持ってるのはニコニコ動画くらいな気がするけど、角川さん辺りも作るものは多いけどなんか出来そうな気もする。




こういうのがないから、俺らは別にビジネスとかよくわかんないのに投資家にプレゼンしないといけないし、投資家にプレゼンする機会を作ることさえ一苦労。


漫画業界はうらやましいよ。
えげつないけど、うらやましい。
なんか作れないもんかね。出版社的なもの。そろそろ頃合だと思うんだけど。