期間契約の問題

・・アホみたいに長くなってしまった。

前書き

オフショア開発に関する3章構成の考察資料。
関連は下記を参照。

  1. オフショア開発について
  2. 案件契約 < オフショア開発?

今回は中小企業で幅を利かせる期間契約に関しての問題提起を行う。
期間契約というものの概要についてはオフショア開発についてで述べているため、そちらを参照のこと。

期間契約の流れ

期間契約はもちろん多くの例外はあるが、大抵は○○案件の補助という形で契約を結ぶ。
多少見づらいが、よくあるタイプの開発の流れを図1に記す。
[図1]

     案件契約  期間契約  期間契約
 +---+発注 +---+発注 +---+発注  +---+
 |A社|---->|B社|-+-->|C社|----->|E社|
 +---+     +---+ |   +---+      +---+
                 |   +---+
                 +-->|D社|
                     +---+

A社にて案件が発生し、設定した開発期間は6ヶ月とする。
A社はこの案件の開発を、B社に案件契約で依頼する。
この際、B社では開発要員不足を補うためC社に6人の人員確保を依頼し、この際開発期間は案件の開発終了予定期間である6ヶ月とする。
C社は自社だけでは6人の人員が確保できなかったため、不足している3人の人員をE社との期間契約によって確保し、この契約期間中の作業は、環境構築の難からB社での作業とした。
また、B社はデータベースに関してのスペシャリストが不足していたため、D社のスペシャリスト人員と3ヶ月間の期間契約を結ぶ。
これにより、B社で開発作業を行っている人員は、B社の人員、C社の人員、D社の人員、E社の人員が入り乱れる形となった。
これが、現在のIT業界における実に一般的な開発形態である。


この際、若干複雑な会社間の関係が発生する。これを図2に示す。
[図2]

                     +---+発注 +---+
 +---+     +---+発注 |C社|---->|E社|
 |   |発注 |   |---->+-+-+     +-+-+
 |   |---->|   |  作業 |         |
 |A社|     |B社|<------+---------+
 |   |<----|   |       |
 |   | 納品|   |---->+-+-+
 +---+     +---+発注 |D社|
                     +---+

図2を表で解説したものを表1に示す。
[表1]

A社 B社 C社 D社 E社
A社 × × ×
B社
C社 × ×
D社 × × ×
E社 × ×

○ -> 知っている
● -> 知らないが、人員を派遣している
▲ -> 知らないが、人員が自社に来ている
× -> 知らない


特に複雑なのはB社とE社の関係だろう。
B社はE社を知らないのに、開発環境がB社にしか存在しないため、E社の人間をB社に迎え入れざるをえない。しかし、E社はあくまでもC社との期間契約を結んでいるだけなので、B社はE社の存在すら場合によっては知らない。
多くの場合、E社の人員はB社に対してこう紹介される。

  1. C社の人員です。
  2. C社の協力会社の人員です。

実際に多用されているのは「1」の方だろう。
例えば個人情報を取り扱う種類の業務であれば、A社とB社の間にはかなり厳重な機密保持契約が交わされる。
B社は当然発注先であるC社、D社ともその手の契約を結び、C社、D社の人員はちゃんとした企業であればその契約を徹底されるはずである。
この時C社の都合によって手配されたE社の人員を迎え入れるため、B社とE社の間でまた厳密な機密保持を結ばなければ、E社の人員を開発に使うことが出来ないような契約が、A社とB社の間で成立していたとしよう。この場合、B社はE社とも、厳密な機密保持契約を結ぶ必要がある。E社の人員をC社の人員とすることで、この手間をショートカットすることが出来る。
これ以外にも、そもそもB社とC社の間でC社以外の人員を開発に使うことが禁止されていた場合等でも、E社の人員をC社の人員とすることで、B社との契約違反を(表向きは)避けて業務を遂行することが出来る。B社も薄々気付いてはいるが、C社に騙されているという立場を確立することで、社会的な面目を保つことも成功するわけだ。
極端な例だが、E社が暴力団絡みの会社であったとしても、B社はE社のことを知らないわけだから会社の情報を調査する必要もなく、C社に全責任を押し付けて業務を続ける事が出来る。


一見デメリットばかりのように見えるC社だが、人員不足をE社の人員で補いB社の発注を取り付けることに成功するだけでなく、B社からC社への発注額と、C社からE社への発注額に差を付ける事で、C社に発注差額が利益として入る*1
E社も仕事にありつく事が出来て、かなり大きなトラブルが起きたりしない限り、皆幸せに暮らしましたとさ、となるわけだ。


ちなみに「協力会社の人員」と紹介した場合でもC社が全責任を負えるケースなどでは、[2]の紹介でも全く問題はないためこのケースも少ないわけではない。

開発実績の問題

さて、先にあげた極々一般的な期間契約の開発における問題として、開発実績というものが挙げられるだろう。
会社の沿革やら事業例やらで掲載されるアレである。
開発実績の一例を「表2」に示す。
[表2]

会社 契約形態 作業形態 開発実績
A社 発注元 B社に完全依頼 ある
B社 受注元 自社で開発 ある
C社 期間契約 B社に6人を常駐 ある
D社 期間契約 B社に1人を3ヶ月間だけ常駐 ある
E社 期間契約 C社の人員として、B社に3人を常駐 無い

あくまでも一例。C社とD社も無いケースはあるし、B社ですらホームページなどには載せられないケースもある。
ここでのポイントは、E社の開発実績はC社の人員としてやっている以上無いという事。
C社の人員としてB社で開発したE社が、会社として開発実績を記すのはどうよという道徳的な問題ではなく、C社とE社の間で明示的または暗黙的な契約が交わされ、E社の開発実績掲載は事実上封印されているのである。B社に偽装がバレると、B社も責任を追及しなければならないし、C社も責任を追及されなければならないので、E社が黙っていてさえくれれば皆幸せということだ。


また、本質的にはC社にも開発実績は無い。
上記例だと開発実績として「書ける」とはしているが、期間契約なので見積もりも提案もしたわけではなく、B社での作業なので環境構築もしておらず、派遣した6人(実際は3人)の人員の作業は完全にB社の指揮下にある。
期間契約の実質は派遣だとオフショア開発についてで記した通り、C社の実績は派遣実績であって開発実績ではないのだ。
とはいえ、C社も貴重な人員を6ヶ月も派遣したので、○○システムの構築をサポート、と会社紹介に記す事は可能だろう。
道徳的には開発実績として記すべきではないと思うが、期間契約ばかりやっている企業は開発実績が白紙になりかねないので、多くの小企業で記載していることだろう。この理由により、前述のE社も案件の具体的な名称は出さず、例えばYahooのサイト構築を手伝ったとすれば「ポータルサイト構築補助」などと書くケースもある。


C社とE社に共通しているのは、事実上開発実績は存在しないということ。
最終的なシステムはB社とA社の手元にはあるが、C社とE社(とD社)にはない。書面上に残すことは出来るが、E社は稼動例を紹介することも出来ないし、C社も「で、どの辺りを作ったの?」ということは、実際に作業していた人員しか把握していないし説明も出来ない。
まとめると、期間契約は派遣なので、いくら実務を積み重ねても、開発系企業として信頼のおける実績を積み重ねられないという問題がある、ということである。


なお、例外としてD社を軽く紹介しておくと、D社は開発実績という観点ではやはり希薄なものの、なかなかに説得力のある業務実績というものを記すことが出来る。
D社は期間契約ではあるものの、役割がデータベースに特化しているため、例えばYahooのサイト構築をD社が手伝っていた場合、「Yahooのデータベースを設計」などと記せる。
期間契約で効果的な実績を残すには、こういったスポット型の契約、または業務をより限定した契約の方が効果的と言えるだろう。もっともスポット型の期間契約が結べる企業は、案件契約を結ぶだけの信頼を持つ企業であることも多いのだが。

人員依存の問題

期間契約には人員への依存度が高いという問題がある。
営業は楽なのである。見積もりをしなくていいのだから。
会社は楽なのである。保守責任は発生しないのだから。
では誰が大変な思いをするかというと、作業に当たっている人員である。人員は自分の経歴書を作らされ、偉そうな客先責任者と面接をさせられ、知らない会社に派遣され、望まない言語で望まない内容の案件の、望まない部位を開発させられる。
実務は全て、実際に派遣される人員に依存するのだ。


これはどういう問題を生むか。「楽」とはどういう問題を生むか。


先にあげた例を出すと、B社にとって、C社から来た人員は6人に見える。このうち、実質的にチームを引っ張っている人員がおり、その人員をとても信頼していたとしよう。この人員を仮にFとする。
FはB社との打ち合わせを行い、自社人員残り5名の管理を行い、グループリーダーとして精力的に活動を行い、品質の高い仕事をして6ヵ月後に去っていったとする。
さて、FはB社との打ち合わせを全面的に行っていたので、B社とC社から来た(とされる)残り5名との信頼関係は薄い。親交はあっても、「結局Fがいなければ駄目な人員」とみなされているとしよう。
実はFはE社の人員だったとする。
B社がC社に開発を例によって期間契約で再度依頼するとき、B社はF以外の人員を望むだろうか。
この際、C社の会社としての力量と、Fの人員としての力量、どちらをより評価するだろうか。


期間契約は営業も会社も楽である。
よって、その2つは開発の際いてもいなくても大差はない。正確には、代わりはいくらでもいる。楽とはそういうことだ。
大変な思いをしている分、Fは評価され、Fの代わりはいないとされる。
E社がC社との関係を破棄し、FがE社の人間としてB社に営業に行ったとすると、B社には役に立たない5人(本当は3人)を抱えるC社より、信頼のおけるFを擁するE社を優先してしまうかもしれない。C社は歯軋りをしながら見守るしかあるまい。
期間契約は諸々の手続きが楽な分、人員への依存が非常に高いという問題を抱えているのである。
この問題はE社側から見ても、Fの退社によってせっかく築いたB社との関係も断絶する危険性を内包しており、B社もC社もE社もFという一人の人員の動向に踊らされるはめになる。企業として、あまり嬉しい事態とは言いがたいだろう。


本題とは少しそれるが、B社も楽をしているので、C社やE社から見てもB社の存在が希薄になる点も注意した方がいいだろう。
発注する側も、代えはいくらでもきくと思われてしまうのである。
期間契約の発注なんて、予算さえ組めばどこでも誰でも出来るからね。尊重しあえる関係を築くには、会社と人員間はもちろん、会社間でも苦労が必要ということだ。

人員分散の問題

期間契約では常駐が主な作業形態になると書いた。
先にあげた開発例では、C社から3人、E社から3人がそれぞれ6ヶ月間B社に行ってしまうのと、D社からも1人が3ヶ月間B社に行ってしまっている。
直感的にわかりやすいと思うが、C社はせっかく用意した3人分の机が空席になってしまうし、3人もいなくなれば社内の活気に悪影響を及ぼすこともある。そのうちの一人が定例の上役会議にでも出ていれば、出席をどうするかという問題も出てくるだろう。


人員サイドから見ても、仮にC社が千葉県にあり、B社が東京都にあるとして、家が近いからという理由でC社に就職した人員が、なぜか毎日片道1時間以上もかけて東京まで半年間も通勤しなければいけなくなる。まあ、これは人員の考え方が甘いとも言えるが、事前説明を怠った場合、C社はその人員に対するなんらかのフォローをしなければ、人員の退社率は高くなってしまうことだろう。
他にもB社の就業時間が朝9時からだとして、E社はフレックスタイムだったとすると、せっかくフレックスタイムが魅力で就職したのに毎日定時に出社を強いられたりもする。これは契約によってなんとでも出来るが、B社とE社の間で直接契約を締結していないケースだと話は複雑になり、多くの場合E社とE社社員の間で締結されている就業規則は無視されてしまう。


期間契約で主に行われる常駐形態での作業は、企業の活力を奪い社員の意欲を奪う。
これが、常駐という形態で人を派遣する際に支払う代償である。便宜上、人員分散の問題と名付けておく。この問題は他にも様々な副作用を及ぼすのだが、本書ではこの辺りにしておく。

技術分散の問題

期間契約は根本的に一つの問題がある。
期間契約というより、これは常駐開発という業務の性質なのだが、「指示は現場の人間が出す」。これが基本である。
さて、指示を自社で出さないということはどういうことか。
指示能力が育成されないといった問題もあるが割愛。
本項では指示系統を現場に委ねる事で発生する問題の内の一つ、技術分散について記す。


先にあげたE社を引き合いに出すと、E社は期間契約を主業務としている会社である。
今回行ったC社の業務(正確にはB社の業務だし、A社の仕事だが)で、B社はOracle、JAVA1.4+Servlet+WebLogicで開発を行った。この際、CシェルとPerlも補助的に使用し、サーバはHP-UXだった。


E社はこの際、別の社員3人を他社に派遣していた。
彼等はSAPのMySAPに、ABAPを使用した独自のレポート画面、並びにそのレポート画面を作成するための一連の機能追加を主業務としていた。


また、E社の別の社員はC++WindowsCEデバイスドライバを開発し、また別の社員はRedHat Linux AS3.0上で動作する負荷分散システムをC言語で構築していた。


さて、E社が得意とする技術分野はなんだろうか。
C社の業務が終了した3人の社員は、次にどこに行くだろうか。SAPの方で人員増員があったからそちらだろうか、WindowsCEデバイスドライバ開発に増員があったからそちらだろうか、全く新しいシステムだろうか。


期間契約(正確には常駐開発)とは。
「何をどうやるかを相手が決める契約」である。
本質的にE社の業務とは、相手に合わせる業務となる。
相手に合わせている以上、E社は方向性を確立しがたい。方向性を相手が決めてしまうのだから、そうならざるを得ないのだ。


全然違うスキルを持つ人員が一同に介したとして、E社のディスカッションはとても刺激的なものになるかもしれない。だが一同に介しても、皆方向が違うので、案外力を合わせにくい状況になる。優れたリーダーがいれば別かもしれないが、多くの企業では社員がいくら集まっても建設的な話し合いにはならず、「最近どう?」「うーん、C++やってる」なんて、ありふれた会話をして終わることになる。
これがWeb系に特化した会社であれば、どうだっただろうか。
「最近どう?」「Servletやってる」「俺はPHPだけど、Servletってどうなの?」「開発効率は悪いけどフレームワーク使えば解消出来るし、やっぱり大規模なのはJAVAでしょ」「でもPHPも5になってから大分よくなったよ」「へぇ、どんな感じになったの?」
辺りは出来るだろう。
さらに全員が同じ案件をこなしているとしたら、どんな話し合いが出来るだろうか。
全員が同じ言語を使っていたら、どんな話し合いが出来るだろうか。

責任放棄の問題

期間契約は保守責任などは発生しないため、ローリスク・ローリターンと安定した利益を享受出来る、中小企業に優しい契約である。
が、実は権利と責任は限りなく近い存在であり、この責任を負わない、もとい負えないという事は、期間が終了した後の業務の可能性を縮小するという側面も持っている。
C社はB社に依頼されて人員を派遣したが、A社に納品したのはB社である。もちろん、C社人員は引き継ぎ資料なども作成し、自身が離脱した後B社が困らないように配慮している。
A社はB社に保守を依頼し、B社は開発が完了した後も継続して収入を得る。この際、C社人員が作成した引き継ぎ資料などももちろん利用している。


さて、C社もE社もD社も、B社が得ているこの保守に関する利益は享受できていない。
なぜか。
彼らは納品をしていないし、責任を負っていない。A社から見れば、彼らは開発をサポートした人員に過ぎず、保守を依頼する必然性は皆無である。B社は開発の大部分をC社に依存していたとしても、実際に納品したのはB社であり、責任を持っているのもB社である。よって、保守はB社に依頼される。
A社の今回の開発内容にさらに機能を追加したいと考えれば、またB社に話をすることだろう。B社は話を受けた段階で初めて開発人員の検討を行い、C社にまた依頼するかもしれないが、しないかもしれない。いずれにせよ、A社とB社の話し合いにおいて、C社は蚊帳の外である。


こうしてローリスクなC〜Eまでの各社は、ローリスクであるため案件の終了と同時に役目を終え、また別の仕事を探さなければならないのでしたとさ。
責任を負わないという事は、そういうことだ。発展性がないのである。


発展性がないということは、C〜Eまでの各社がより高い利益を上げようとした場合の選択肢は限られてくる。

  1. 人員を増やす
  2. 人員ごとの単価を上げる

この二つくらいしかあるまい。
ローリスクであるため「ソフトが100万本売れた」なんて事はないし、「システムのカスタマイズ売りが出来るようになった」なんて事もない。開発業務以外で努力をしなければ、C〜Eまでの各社に売り上げ実績の向上は見込めない。
これは、開発者にとってとても悲しい事だと思う。
いくらいいものを作っても、失敗しようと成功しようと、一番おいしい部分は他所の企業にもって行かれてしまうのだ。
特許をとりました、でも他社のものになりました。
ユーザー数が300万人を突破しました、でも自社に還元されませんでした。
派遣先で非常に高い評価を受けました、でも給料に反映されませんでした。
彼らは期間で契約を結んでいるので、当然なのだ。
何をどれだけのクォリティで作ろうと、彼らの努力が本当の意味で報われる事はない。
それは、とても悲しい事だと思う。


悲しみの責任は全て、責任を負うリスクを回避した、企業にある。
発展性がないことと上記を、責任放棄の問題と便宜上呼称する。

法的な問題

ところで派遣法という法律をご存知だろうか。
正式名称は労働者派遣法という。
※2年ほど前に改変版が施行された法律なので、改正労働者派遣法というのが正しいのかな?
派遣という労働形態に関する規則を定めている法律である。
この法律では2重派遣、つまり派遣会社が別の派遣会社から人員を派遣してもらい、それをさらに自社の派遣人員のように見せかけて派遣することを禁止している条項がある。これを派遣の派遣、二重派遣と言う。
さて、先に出した例のE社の人員は、B社に常駐で行っているので、これって二重派遣ではないだろうか?
答えはNoである。派遣法とは派遣という形態で労働者を従事させた場合に適用される法律であり、通常の期間契約には適用されない。
ただしC社がB社に派遣契約で人員を派遣している場合はYesになる。残念ながらIT業界ではYesの事例も多いようだが、Yesの場合大抵両罰規定というものが適用されるケースになり、派遣先も派遣元も罰金を科せられる。詳細は割愛するが、複数の法に違反することになるので100万程度ではすまないケースもある。
あなたは現在の会社がしている契約、中間に入っている会社がしている契約、発注元と中間会社がしている契約、どこまで把握していますか?
蛇足だが、派遣契約の場合、面接をしただけで違反になる。


ところで職業安定法という法律はご存知だろうか。
読んで字の如く職業を安定させるための法律である。
この法律では労働者の供給事業というのが、一部を除き禁止されている。ちなみに派遣と供給は違う点を留意すること。わからない場合は派遣を勉強するといい。
さて、労働者供給事業って・・、C社もE社もD社もやっているのではないだろうか。そもそも期間契約で、かつ常駐で作業をする場合、労働者供給事業ではないだろうか。
これの答えはグレーである。Yesとも言えるし、Noとも言える。
C社の拠り所は、「B社でしか開発環境が構築出来ない為、業務上やむを得ず常駐という形態で作業を行った」という理屈になる。これを覆す事は、実は結構難しい。都合の悪い部分は隠しているが、確かに重要な事実ではある。
ではE社はどうだろうか。C社との契約は、業務上やむを得なかったのだろうか。
B社とD社の間で交わされたケースはどうだろうか。常駐でなくてもいいのではないだろうか。
要するに、ケースバイケースなのだ。グレーなのである。大体のケースはブラックなのだが、業界の慣習というものがグレー化しているとも言える。しかしグレーということは、法的に非常に危険な契約であるとも言える。労働者が団結して騒ぎ出したら、少なくとも裁判で争われる事態に持っていかれかねない点を理解した方がいいだろう。
裁判で争われているという事実が、中小企業にとってどれ程の打撃になるかは記述するまでもあるまい。派遣先にも罰金が命じられる恐れがあるので、派遣先から損害賠償を請求されるケースもある。
法律家の間では、これを「偽装派遣」または「偽装請負」と呼称しているようだ。


ところで労働基準法は・・さすがにご存知だろう。ご存知でないなら、出来れば社会人になる前に理解出来なくてもよいので一度、なってからなら理解出来るよう何度も読んでみることをお薦めする。
その労働基準法の第6条にはこんな記述がある。

何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

要するに就業した分の賃金はちゃんと支払ってね、間に入って利益を得ちゃ駄目だよ、という話だ。
法律というのは入り組んでいるものだから、この記述だけで判断をするべきではないが、そういう記述もある、ということだけ理解していただければよい。
さて、一ヶ月72万円でB社とC社は一人辺り契約を結ぶとしよう。
B社とD社は一ヶ月100万、C社とE社は一ヶ月56万とする。
C社は社員に給与を毎月25万円支払うとしよう。保険料等もろもろを含めて40万程度維持費がかかっているとしよう。
E社は社員に給与を毎月22万円支払うとしよう。保険料等もろもろ含めて35万程度維持費がかかっているとしよう。
D社は社員に給与を毎月30万円+出来高で支払うとしよう。3ヶ月間の給与総額は賞与への査定を含めて、200万支払ったとしよう。
さて、C社もD社もE社も、社員に投資した総額より、明らかに収入の方が多いように見受けられるが、どういうことだろうか。どうも他人の就業に介入して利益を得ている、つまり中間搾取しているように見受けられるが・・?
これも、偽装派遣などの話で述べた話と同じく、グレーである。
「期間契約で発注する」=「人員の労働だけで契約している」とは確かに違う。人員との直接契約と、企業との期間契約では、責任の所在が違う。しかしE社とC社の関係はかなり危険だ。E社の社員は、C社の社員であるのが妥当なのだ。E社が利益を享受する理由は限りなく薄い。まあ一応、グレーとしておくが。


知らなかったでは済まされない。
発注する、受注するという事は、それだけの責任が伴う。
発注しなければ作れないようなシステムなら、そもそも受注をしなければいいだけの話なのだから、特に期間契約で発注している企業は今一度振り返って考えて見てほしいと思う。
・・とはいえ。
労働基準法自体、どちらかというと工場での労働に最適化されたものであり、IT業界に向いていないのは事実である。
そんなもん気にしてたらやってらんねーよという意見もあるかもしれないし、実は私もそういう意見は少なからず持っているが、だったら会社なんて経営してんじゃねーよという話になるので、会社を経営するからには労働に関する法律を理解することは義務だ。労働者も法律を利用する権利を持っている。
今一度、立ち止まって考えて見てほしい。
本当にそれは、こんな危険性を持つ期間契約でなければ、発注出来ない案件なのでしょうか?

まとめ

期間契約には実に多くの問題がある。
いや、わかる。楽だし、安定している。よくわかる。
よくわかるが、やはり今一度立ち止まるべきだろう。
期間契約でなければ本当に駄目なのか?
期間契約などを結んでいて、本当にいいのか?
業務は人員に依存するし、人員は分散してしまうし、技術も分散してしまうし、責任を持たないから事業の拡大性も無いし、法的にもやばい。
そんな期間契約で、本当にいいのか?


さて、期間契約をやめるとした場合、当然案件契約が浮上することになるだろう。
案件契約はリスクが高い分開発費も高騰する。それで2の足を踏んでいるのだとしたら、オフショア開発、使ってみませんか?
という話を案件契約 < オフショア開発?で述べたいと思う。

*1:この発注差額は、よく「中間マージン」または単に「マージン」と呼称される